世界には数えきれないほど多くの言語があり、文字・発音・文法も様々です。
特に発音は、外国語学習者にとって頭を悩ませる問題です。
日本語の発音は「あかさたな~」で数えると五十音で、「が」、「ざ」などや「ぱ」、「ぷ」などを含めると六十数音です。
しかし、英語を始めとするヨーロッパ系の言語では、八十音程度の音があり、日本語にはない発音も含まれています。
同じアジアの言語でも、たとえば中国語や朝鮮語(ハングル)の発音には、日本語に存在しない音も多く含まれます。
そうした音の発音には、日本語を母語とする人は苦労します。
日本でおなじみの人名表記も、100%正確ではない?
日本では、外国人の人名をカタカナ表記することが原則(中国人や台湾人は例外)です。
しかし上記の理由により、100%正確にカタカナで表せないことも多いのです。
一番分かりやすい例は、人名のMichael を英語読みする場合でしょうか。
発音記号は[mάɪk(ə)l]となっていますが、日本ではほぼ100%「マイケル」と表記します。
ただ、「マイコー」あるいは「マイクル」と書いても良さそうに思います。
映画「ジュラシック・パーク」の原作者である作家の故・マイケル・クライトンは、一部の出版社では「マイクル・クライトン」と表記されています。
ドイツ語のウムラウトは発音しにくい!
ドイツ語のウムラウト「ä」、「ü」、「ö」も発音及び表記が困難です。
ドイツ人男性に多い名前「Jürgen」も、日本語では「ユルゲン」と表記するしかありませんが、厳密には「ü」と「u」は異なる発音です(私には判別も使い分けもできません・・・)。
「ö」も同様です。
ドイツの前首相 Gerhard Schröder(ゲアハルト・シュレーダー)の名前を英語表記する時は、
「Schröder」
ではなく、
「Schroeder」
となっています。
英語にはウムラウトが存在しないので、やむなくスペルを変更しているのです。
北欧の言語には音の種類が多く、発音も難しい!
北欧の人や土地の名前に時々出て来る「ø」も、一体どう発音するのか皆目見当が付きません。
ちなみに、デンマーク人の母語であるデンマーク語には、発音が80超あるそうです。
英語やドイツ語、フランス語などの発音も全て含まれていると聞いたことがあります。
デンマーク人には数ヶ国語を話せる人が多く、英語の発音もイギリス人より上手だとジョーク混じりで言われますが、それにも納得がいきます。
また、人名ではありませんが、スウェーデンの都市に「Göteborg」という所があります。
発音が非常に難しく、カタカナでは「イエテボリ」、「ヨテボリ」などいくつかの表現があります。
英語では「Gothenburg」と、簡単に発音できる綴りに変えてしまいました。
東欧の人名もカタカナ表記が大変困難!
サッカーJリーグのジェフ市原や日本代表の監督を務めた
「Ivica Osim」(英語表記)
は旧ユーゴスラビア国籍でしたが、現在ボスニア・ヘルツェゴビナ国籍です。
日本では
「イビチャ・オシム」
と表記されていますが、より正確な発音に近付けようとすると
「イヴィツァ・オスィム」
のように表記する必要があります。
東欧の国の人名も、カタカナ表記が大変困難です。
そもそも東欧では一般的なアルファベットではなく、「キリル文字」(ロシアやギリシャなどでも使用)を使っている国が多いのです。
オシム監督も、本来はキリル文字で表記するのが望ましいです(私は全くキリル文字が読めません・・・)。
ポルトガルの英雄の名前も、表記が統一されていない!
スポーツ選手の名前は、日本では一般紙・スポーツ紙と専門雑誌で表記が異なることが時々あります。
たとえばサッカー界のスーパースター、ポルトガル人クリスチアーノ・ロナウドですが、一部の新聞では
「ロナウド」
ではなく
「ロナルド」
となっています。
「Ronaldo」は、英語名の綴りでは「Ronald」(最後に”o”がない)であり、英語風に読めば確かに「ロナルド」となります。
なぜサッカー専門誌では「ロナウド」なのかというと、ポルトガル語では語中の”l”を
「ル」ではなく「ウ」という風に発音するからです。
ただ、「ロナウド」なら完璧かというと、実はそうではありません。
「R」も語頭では、ポルトガル語だと
「ラリルレロ」ではなく「ハヒフヘホ」っぽい発音になります。
つまり、
「ロナウド」
ではなく
「ホナウド」
が正確な発音に一番近いです。
同様に、よくある名前の
「Rafael」(カタカナでは「ラファエル」)
も、ポルトガル語風に発音すると
「ハファエウ」
という感じになります。
最後に・・・。
外国の人名・地名の発音や表記には、どこの国のマスコミも苦心しているはずです。
それが言語の持つ独自性、多様性の表れでもあります。
ただ、できる限り正確な発音に近付けるよう、工夫して欲しいところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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