2021年(令和3年)現在、映像の記録媒体として標準的に使われているのは、
DVD(Digital Video Disc)
です。
市販されている映画やドラマなどのソフトはDVD方式です。
我々個人がテレビ番組やネット動画をダビングするために購入するのも、空のDVDディスクです。
DVDディスクはサイズもCDと同じで、持ち運びが楽という利点があります。
ここ2~3年で映画やドラマ・アニメなどの「ネット配信」がかなり世の中に浸透してきましたが、まだしばらくDVDディスクが滅びることはないでしょう。
2000年代前半までは、VHSビデオテープが標準だった!
DVDディスクが覇権を握るまでに、長らく映像記録媒体として広く使われていたのは、
「VHSビデオテープ」
でした。
1990年代末はまだ、TSUTAYAなどのレンタルショップにはVHSテープの商品が並んでいました。
映画などの販売用セルソフトもVHSでした。
しかし、サッカーの日韓ワールドカップが開催された2002年(平成14年)頃から、DVDレコーダーが急速に普及し始めました。
それに伴い、映画などのレンタル・セルソフトもどんどんDVDで発売されるようになりました。
わずか3~4年ほどで、VHSの映像ソフトや録画用ビデオテープはDVDに駆逐され、
「過去の物」
へと追いやられてしまったのです。
再生専用のビデオディスク、レーザーディスクとVHDが存在した!
とは言え、VHSテープも1980年代前半からの約20年間、映像記録媒体の王者として利用されていました。
その間に、新たな方式や商品は開発されなかったのでしょうか?
実はあります。
平成生まれの若い世代には記憶がないでしょうが、映画などの再生専用として
「レーザーディスク」
「VHD」
の二種類のビデオディスクが発売されていました。
当然ですが再生用の機械「プレーヤー」も発売されていました。
日本ではレーザーディスクが先に発売された!
まず「レーザーディスク」ですが、日本では1981年(昭和56年)に、パイオニアが家庭用レーザーディスク(以下LD)プレーヤーを発売しました。
ざっくり言えば、現在のCDディスクと同じような物です。
ただし、ディスクのサイズはCDよりかなり大きく、映像を収録するため容量もはるかに大きかったのです。
CDと同様、レーザーによりディスクのデータを読み取る
「非接触式」
で、ディスクの摩耗が起こりません。
VHDは、ディスクがケースで保護されたまま!
もう一方のVHDは、
「Video High Density」
の略語で、日本ビクター(現:JVCケンウッド)が開発した方式です。
1983年(昭和58年)に家庭用プレーヤーが発売されました。
LDとは反対に、センサーでディスク表面の溝から情報を読み取る
「接触式」
のため、再生を繰り返すと摩耗が生じるという欠点がありました。
また、レコードと同じくディスク表面に溝があるため、傷が付いたりホコリ・指紋などで汚れることのないよう、ディスクはキャディーと呼ばれるケースに収納されたままで、手では取り出せないようになっていました。
再生する際にプレーヤーにキャディーを差し込むと、ディスクがプレーヤー内部に入って行きます。
取り出す際もキャディーを差し込むと、ディスクがキャディーに戻って行きます。
しかし、生産コストはLDよりも安く抑えられる利点がありました。
規格争いはVHD優勢と見られたが、意外な結果に・・・。
ビデオテープに関しては、VHS方式とベータ方式の激しい規格争いが繰り広げられました。
ビデオディスクでも、LDとVHDの間で規格争いが勃発しました。
当初はLD陣営は、何とパイオニア1社のみ。
対するVHD陣営は、松下電器産業(現:パナソニック)や東芝、三洋電機、シャープ、三菱電機など国内メーカー11社、海外メーカーもGE(ゼネラル・エレクトリック)など2社が参入。
それだけ聞けば、誰でもVHD陣営が圧勝し、標準規格となると考えるでしょう。
しかし現実はさにあらず。
VHD陣営はプレーヤー発売までにかなりの時間を要してしまいました。
その間にGEなどの海外メーカーが撤退し、世界規模のビジネスチャンスを逃がしてしまう結果となりました。
2年ほど先行したLDは、画質の良さや非接触式のメリットなどを売りに、映画ファンや家電マニアの支持を固めて行きました。
VHD方式のプレーヤーが発売されてからも、LDを追撃することはできませんでした。
LDソフトの市場が拡大したことで、消費者もLDを選ぶ方向へ。
結局、パイオニアだけのLD陣営が市場をリードしてしまったのです。
LDへ鞍替えするメーカーが続出!ついに決着が・・・。
そうなると、VHD陣営からLD陣営に鞍替えするメーカーが多数現れました。
当初はどちらにも属していなかった、映像家電の巨人ソニーも、LD陣営に加わりました。
1987年(昭和62年)には、ついに松下もLD陣営に加わり、ビデオディスク市場のシェアはほぼLDが独占することとなりました。
再生専用で録画ができず、VHSのライバルにはなり得ず・・・。
しかし、LDもVHDも、VHSやCD、DVDのように録画できるという方向には進みませんでした(あるいは進めなかった)。
映像記録媒体には進化できず、あくまでも再生に特化した媒体だったのです。
そのため、
「映画などのマニア向け高級品」
といったレベルから抜け出せず、VHSの牙城を崩す存在にはなり得ませんでした・・・。
再生だけでなく録画も可能で、サイズもCDと変わらないDVDが普及するに至って、ようやくVHSの時代は幕を閉じました。
周囲にもLDやVHDを持っている人はほとんどいなかった!
色々書いて来ましたが、私の親戚や友人・知人でLDプレーヤーを持っている人は、一人もいませんでした。
VHDについては、亡くなった母方の叔父が割と「新し物好き」で、1980年代半ばに持っていました。
しかし、LDよりも観られるソフトの数がかなり少ないと語っており、2年くらいで処分してしまったそうです。
社会人になりたての1990年代半ば、上司や先輩に連れて行ってもらったスナックで、LDやVHDのプレーヤーを見かけたことは何回かあります。
カラオケ用に導入していた店が、そこそこ存在していたのです。
最後に・・・。
平成後半生まれ、20歳前後までの若者たちは、LDやVHDのことなど全く知らないか、テレビやネットの映像で見た
「レトロ家電」
として知っている程度のどちらかでしょう。
2021年の今振り返ると、LDもVHDも完全に
「しくじり家電」
と呼ぶべき存在です。
規格争いではレーザーディスクが勝利したものの、最終的には
「勝者なし」
の悲しい戦いとなりました・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
興味がございましたら、こちらもお読みください。
「最近、全然カラオケに行ってないな・・・。」そうお思いの方々は多いはずです。2020年(令和2年)初めからのコロナ禍は、日本のカラオケ文化に甚大な影響を及ぼしました。マスクなしで大声を出し、飛沫が飛び散るとい[…]