先日このブログで、大阪の「中崎町」エリアについての記事を書きました。
この「中崎町」は、不動産業者などが主導する
「再開発」
をせずに「オシャレ」エリアに生まれ変わったことで有名です。
皆様は「中崎町」とお聞きになり、どこの地方のどこの地域かお分かりになるでしょうか?関西地方にお住まいの方以外には、ピンと来ないかもしれません。「中崎町」とは、大阪市北区中崎一丁目から三丁目及び中崎西[…]
しかし、こういった例はまさしく「例外」です。
企業と行政が連携して、再開発のため資本投入!
大抵の地域は、活性化のために大規模な再開発を行います。
不動産業者やゼネコン、場所によっては鉄道会社も加わり、行政と連携の上で巨額の資金を投入します。
そして、極端に言えば
「全く別の新しい街」
を生み出してしまいます。
お金を使えば簡単に再開発できるとは限らない!
ただ、大きなお金を使えば簡単に再開発を進められるとは限りません。
地方の田舎町ならともかく、大都市の中心部にある繁華街ともなると、金銭面だけでなく様々な面で障壁が立ちはだかって来ます。
再開発後のイメージ画のような爽やかさとは正反対の、人間のドロドロした感情まみれの問題を、全てクリアして行かなければなりません。
繁華街の地域は、地権者の数が多い!
都市中心部の繁華街は、大抵の所が大小のビルなどが建ち並ぶ、いわば
「ゴチャゴチャした」
様相を見せています。
これはすなわち、
「地権者(=土地の所有者)の数が多い」
ことを意味します。
法務局で、繁華街地域の
「公図」(=土地の区割りを表示した図面)
を閲覧するか写しを請求して見てみれば、非常に細かく土地が分割されていることが分かります。
建物の数がそれほど多く感じられない区域でも、底地は細かく分かれており、所有者の人数がかなり多い所は多いのです。
小さい土地でも買収できない所があると、再開発に影響大!
再開発の一番のキモは、そうした細かい土地を漏れなく買収できるかという点です。
計画エリアの端っこの方の土地なら、仮に買い取れなくても処置のしようはあります。
しかし、計画エリアのど真ん中の辺りで買収できない土地が少しでも残ってしまうと、再開発に大きな支障を来たすこととなります。
再開発の常として、中心部に「ランドマーク」と呼ばれるような大きなビルなどを建設し、街の象徴にしようとします。
そうしたことが難しくなります。
『地上げ屋』などが動いても、話はすんなりまとまらない!
昭和末期の
「バブル景気」
時代は、暴力団などが背後に控える
「地上げ屋」
たちが暗躍していたそうです。
買収に応じない地権者たちに嫌がらせを繰り返し、立ち退きを迫るといったことが頻繁にあったと聞きます。
しかし、繁華街でもオフィスや飲食店が入居するテナントビルの場合、簡単には行きません。
そうしたビルの地権者(ビルの所有者でもあることが多い)たちも、海千山千の一筋縄ではいかない人が多いそうです。
ちょっとやそっと脅しをかけても、すんなりと話には応じません。
中には、地上げ屋たちと同類、つまり「その筋の人」が所有者であるケースもあります。
最終的に、予定よりはるかに高い金額で土地を買収せざるを得ない事例も多々あります。
相続、地縁・・・。再開発には手間暇もかかる!
また、地権者が遠方に住んでいたり、相続が発生していると、どんどん話が複雑になっていきます。
相続によって、相続人が土地や建物を法定の持分ずつ所有すると、地権者が一人から数人に増えたりします。
相続人調査や相続人の意思確認など、法的な手続をきちんと行わないと、
「相続人への所有権移転登記ができない」
「後から新しい相続人が現れ、色々ゴネられる」
などのトラブルが発生しかねません。
そのため、ヤクザ絡みの業者であっても、再開発の仕事はかなりの労力と時間を要します。
そうした交渉や事務処理を、全ての地権者について完全に行うしかありません。
中には
「ここは先祖代々受け継いできた土地だ!絶対に売らない!」
といった感じで、どれだけ金を積んでも話に応じようとしない地権者もいるそうです。
そうした場合、余計に交渉は長期化していきます。
過去に東京や大阪などで行われた再開発事業も、計画開始から完成まで、10年~20年ほどかかるのは当たり前でした。
大阪は梅田の繁華街にも、再開発の話があったが・・・。
大阪市北区の中心地
「梅田」
エリアに
「露天神社」(つゆのてんじんしゃ)
という神社があります。
元禄時代の浄瑠璃劇作者、近松門左衛門の
「曽根崎心中」
のモデル、お初にちなんで
「お初天神」
と呼ばれています。
ここの近辺には多数のビルが建ち並び、飲食店も数多く店を構える区域です。
この辺りも、20世紀の末頃から再開発の噂が立っていますが、20年を過ぎても一向に進展する様子が見られません。
以前仕事で知り合った不動産業者の方が、
「あの辺は地権者が沢山いて、さらに賃借権とかの権利関係も複雑です。地上げ屋みたいなのが水面下で動いているらしいけど、なかなか話が進まなくて、本格的な再開発は難しいようです。」
と話してくれました。
それも10年以上前のことです。
『お初天神通り』の担保物件を売却させた・・・。
実は、有担保債権回収の部署にいた頃、お初天神通りの不動産を任意売却させたことがあります。
賑わっている表通りから少し外れ、奥まった場所にある小さな土地・建物でした。
バブル末期頃に担保に取ったらしいですが、正直なところ担保物件にはふさわしくない物件でした。
所有者が返済も安定せず、任意処分にも消極的だったため、競売申立を通告したところ、慌てて買受希望者を連れて来ました。
買主は不動産業者でしたが、こちらの希望額より高めの金額で購入を申し出て来たので、任意売却はめでたく成立しました。
今後の再開発を見越してのことだったそうですが、目論見通りには行かなかったようです。
最後に・・・。
都市再開発という、夢いっぱいの華やかな物語の裏側では、欲まみれ打算まみれの駆け引きが繰り広げられています。
何とか再開発が無事完了しても、全く地域が活性化せず、夢が悪夢に変わってしまう恐れも十分にあります・・・。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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